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濱田庄司に見る、「一瞬」の厳しさ/(武術・武道)

2013年 02月28日 00:54 (木)

 過日、親しい人の薦めで、陶芸家で人間国宝であった濱田庄司のドキュメントを見た。

 濱田は、柄杓に汲んだ釉薬をフリーハンドで器に流しかけて文様を描く、流描(ながしがき)を得意としたことで知られている。

 流描は、やり直しの聞かない一瞬の作業だ。

 それを見たある人が、

「たったそれだけの短時間で、なんであなたの器はそんなに高価なのか?」

 と批判した。

 これに対して濱田は、

 「私の仕事は、15秒プラス60年」

 と答えたという。

 濱田庄司
▲「海鼠釉黒流描文大鉢」浜田庄司作(京都国立近代美術館蔵)


 15秒とは、柄杓で釉薬をかける時間。しかしその背後には、身命をかけて打ち込んだ60年に及ぶ陶芸家としての、たゆまぬ精進があるということだ。


 翻って武芸で考えれば、今この手裏剣の一打は、1秒どころか、コンマ数秒という、手離れの一瞬の出来事であり、結果である。しかしそれは、「コンマ数秒プラス修行年」の結果なのである。

 今この太刀の一振りは、わずか一閃だが、それは「一閃プラス修行年」の成果なのだ。

 
 陶芸における流描の厳しさは、手裏剣術の打剣、剣術や居合・抜刀術における斬りと同様、やり直しの聞かない一回こっきりの勝負にある。

 映像に残された濱田庄司の、まったく迷いのない流麗な手さばきは、一流の剣客による「夢想剣」を見るようであった。

 達人の業が、たしかにそこにあった。


 さて、こうしたプロの陶芸家の厳しい矜持に比べ、我々の普段の稽古に対する真剣味と緊張感はどうであろう?

 多いに自省させられた次第である。

 (了)
 
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