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真剣白刃取りってできますか?/(武術・武道)

2012年 06月01日 14:35 (金)

 過日、とある酒場のカウンターで、昔なじみの常連のAさんとの会話・・・。

 「市村さん、質問していい?」
 「どうぞ、なんなりと」
 「真剣白刃取りって、本当にできんの?」
 「む~ん、何をもって、『真剣白刃取り』って言うのかによりますねえ・・・」

 Aさんは、私よりもひと世代上の、50歳代前半。大阪万博にいったことのある、『20世紀少年』世代である。ということはつまり、『空手バカ一代』世代でもあるわけだ。

 「Aさんの言う『真剣白刃取り』って、あの合掌するみたいにして、刀の刃をパシッとはさみ取るやつのことでしょ?」
 「そうそう、それそれ!」
 「絶対にできないとは、言わないけど・・・」
 「なんか、はっきりしないなあ」
 「刀を振る人が、素人さんなのか、熟練のやっとう遣いかによっても違うしねえ。」
 「仮に、真剣勝負なんだから、刀の人も真剣白刃取りの人も、同じレベルの名人ということで、ひとつ」
 「となると、まあ、十中八九、無理でしょうねえ」
 「そうなの?」
 「例えば、ゴルフのスイングって、アマチュアの平均的なヘッドスピードが、秒速40~50メートルなんですよ」
 「秒速じゃあ、分かりにくいなあ」
 「時速に換算すると、144キロ。つまり、素人さんが刀を振っても、このくらいのスピードで、白刃は飛んでくるわけです」
 「でも、バッティングセンターだったら、150キロでも、結構、打てるでしょ」
 「じゃあ、時速150キロでボールが飛び出すピッチングマシーンの、玉の射出口から、1.8メートルの距離に立っているとしたら?」
 「うーむ・・・」
 「しかも、フェイントもありでボールが飛び出す」
 「・・・・」
 「こうした条件で、顔面に向かって時速150キロで飛んでくるボールを、しかも避けるのではなく、パシッと合掌する形で、掌で挟み取れますかねえ、常識的に考えて?」
 「無理っぽいね」
 「ボールと刀の刃では、また形も違うけども。世の中、絶対ということはなかなか無いから、断言はしないですけど、常識的に考えれば、無理な蓋然性が高いと」
 「ま~た、『蓋然性』とか、難しいことを言う」
 「いや~、メンゴ、メンゴ」
 「それまた死語だよ。じゃあ、やっぱ真剣白刃取りは、インチキなわけだ」
 「いやいや、必ずしもインチキだとはいえないですね。白刃取りをする人と、刀を振る人の相対的な技術レベルにもよりますから。日本一の技術を持つ空手家なり柔道家なりと、剣の稽古を始めてから3ヶ月の人との間ならば、できなくはない・・・、かもしれない」
 「そりゃあ、ずるい」
 「まあね。でも、他者との闘争というのは、かならずそこに、彼我のレベルの差というものがあるわけですから」
 「なるほどね」
 「あるいは、ある種の特殊な武具を使えば、一見、真剣白刃取り風な技は可能です。もっと言えば、ステレオタイプな合掌の形で受ける形でなければ、素手で刀を持った相手を制圧する想定の技は、古流の柔術などではごく一般的なものなんですよ」
 「ふ~ん。やっぱあの合掌してパシッとは、できないんだ・・・」
 「まあ、疑問に思うなら、それこそ竹刀でもいいし、ピコピコハンマーでも、丸めた新聞紙でもいいから、試してみればすぐ分かりますよ」
 「じゃあさ、じゃあさ、仮にだよ。市村さんが、真剣でや~! って斬って、相手がすごい達人で、真剣白刃取りで、パシッと合掌の形で受けられたらどうする?」
 「軽く手首を返して刃を捻りながら、刀を手前に引きますねえ」
 「そうすると、どうなるの?」
 「刀が、信じられないほどものすごいなまくらだったなら、折れるかもしれない。折れれば、折れ残った刀で、相手の手首なり、頚動脈を斬る。あるいは顔面にそのまま突き込む」
 「うえー、えぐい」
 「でもまあ多分、手のひらで挟まれた状態から捻ったぐらいでは、まともな刀なら折れることなんて無いだろうから、刃をひねって引き斬りにすれば、相手の掌が斬れちゃうでしょうねえ。まあ、実際にやったことは無いから分からないけど。そこに板さん自慢の柳刃があるから、試してみましょうか?」
 「マジ!?」
 「うそぴょん」
 「・・・」
 「・・・」

 いまどき、「マジ」というのも死語だが、「うそぴょん」というのも、どうかと思う、我ながら・・・。
 
 「じゃあ、相手が万力のような怪力で、挟まれた刀が捻れない。おまけに刀が名刀で、折れもしない。さあ、どうする先生!」
 「なんかだんだん、想定問答のようになってきましたねえ。そしたら脇差抜いて、斬るなり突くなりすればいいんじゃない」
 「ではでは、その脇差を、相手がよけたら・・・」

 とかなんとか言いながら、縄のれんの酔っ払いたちの、他愛もない夜はふけていくのであった。

 (了)
 
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