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上州の名流を読む

2008年 11月28日 00:28 (金)

 浮世の塵芥のような話ばかりしても、気分が悪くなるばかり。

 そろそろ本来の姿に戻り、秋の夜長に武術談義をひとつ。


 過日、渋谷・宮益坂の古書店で、偶然に見つけたのが本書『馬庭念流物語』(小西敬次郎著/上毛新聞社刊/昭和62年)である。

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 馬庭念流といえば、500年以上の伝統を今も守り続ける名流である。表5本、裏3本、長刀5本、槍5本、組10本、そして矢留術と、古い流儀ならではの総合武術的色合いをみせつつ、比較的シンプルな型構成となっている。

 また、独特の防具をつけ、「足幅をニ尺ほどに広くとり、左足を引き、腰を落として中腰となり、刀身を左前に傾けた下段の構え、ちょうどカエルが飛び上がる前の格好から俗にカワズマタ。いかにも防御主体の構え方である」(同書)と評される護身に徹した「防御の剣」として、また、「そくい付け」と呼ばれる独特の近接技法を使うことでも有名だ。

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 本書は、今から21年前の出版になるが、当時の馬庭念流の稽古の様子から筆を起こし、同流の歴史、さらには広く上州で活躍した剣豪の事跡などを、簡潔で平明な文章でまとめている。地方新聞社ならではの、手作り感あふれる取材の様子なども偲ばれる好著といえるだろう。


 こうした書物との偶然の出会いに、なにか奇妙な縁を感じてしまうのは、本好きの業というものかもしれない。

 また手裏剣術者として私が興味を引かれたのは、安中藩剣術指南で現在の根岸流手裏剣術の祖である根岸松齢についてふれられた一文であった。内容的には、一般的によく知られている事績をまとめたものだが、本書では手裏剣術家・根岸松齢ではなく、上州の剣客・根岸松齢としてとらえている点が、私にとっては新鮮であった。

 しかし、それにつけても疑問なのは、本来、一刀流系の剣術を修め、柔術や手裏剣術も使った松齢が創出した根岸流に、なぜ「刀術組み込み型」以外の、剣術なり居合なり、柔術なりの技が伝わっていなのか? という点である。まあ単純に、「手裏剣術しか伝えなかった」といわれればそれまでなのだが・・・。

 ナゾは深まるばかりである。
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