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高遠の学-易を基盤に置いた高遠藩の武学-/(武術・武道)

2011年 01月27日 23:24 (木)

 昨日、取材のため長野県の旧高遠町(現伊那市)を訪れた。仕事は、春の観光シーズン向けの旅行雑誌の取材だったのだが、何しろ冬枯れのこの季節である。取材といっても、メインの写真は借り物であるし、比較的のんびりとした取材となった。

 地方の取材で時間が余った場合、私はできるだけその土地の図書館に行くようにしている。そこで今回は、伊那市立高遠町図書館に立ち寄った。

 館内に入ると、下駄箱の上の一角に、「高遠町図書館資料叢書」と銘打った、小冊子のシリーズが並んでいた。試みに何冊かのページをめくってみたところ、たいへん興味深いので、以下の4冊を購入した。

『信州高遠藩の武学-進徳館教育における文武両道の原点』
『中村元恒著 尚武論注解(改訂版)』
『高遠藩における易学研究-「高遠の学」の基本理念を求めて-』
『進徳館教育の原点 松田黄牛の易学-現代に生きる高遠の学-』

 いずれも著者は、岡部善治郎氏である。

 ここで語られる進徳館とは、藩政時代に高遠藩に設けられた、いわゆる藩校である。

 進徳館では、文武両道を標榜し、「武」については剣術は一刀流、柔術は荒木流や堤宝山流が指導されていたといい、砲術もたいへんに盛んであったという。一方で「文」に関しては、四書五経の中でも、特に『易経』に重きを置き、これに基づいた実践の学問を重んじていたそうな。

 武術に関してはいうまでもないが、私は個人的にここ数年、卜占と哲学の両面から『易』について学んでいることもあり、これらの冊子をたいへん興味深く読むことができた。

 いずれも、ワープロ印刷、手折りで、布テープで製本した素朴な小冊子だが、高遠の地に息づいていた武学の系譜を分かりやすく解説しており、非常に学ぶ点の多いものであった。


 思うに、われわれ現代の武術・武道人は、日々の武芸の鍛錬を、最終的には行動科学としての“武学”として受け止め、学び、深めていかなければならない。

 そのために、こうした古人の教えと学びの体系は、たいへん示唆的だ。

 ことに、江戸時代中期から幕末にかけて、各地で育まれたいわゆる藩学は、その地その地の風土や気質、編纂に携わった儒者・武人の思想を反映し、非常に個性的かつ独創的なものが多い。

 高遠藩・進徳館の教育は、四書五経の中でも最も難解な易経を根本に据え、しかもそれを形而上の学問ではなく、武人の行動指針となる実学として捉えたことに、大きな特徴があるといえよう。

 進徳館で指導された独自の学問体系は、「高遠の学」として、当時も今も、郷土の人々の誇りになっているという・・・。

 実学の思想としての易。それを基盤にした武学。

 たいへん示唆に富んだ思想体系に出会うことができたのも、何かの縁かもしれない。そういう意味で、もう少し「高遠の学」について、個人的に学んでみたいと思っている。

(了)
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