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刀法併用手裏剣術専用剣のトライアル その1/(手裏剣術)

2009年 11月29日 23:38 (日)

 現在、翠月庵では、初学者の教習用&全距離対応の基本的な剣として無冥流の長剣を正式採用している。さらに中級者の稽古課題として、同じく無冥流の重量剣(穴あきタイプ)、そして上級者には軽量剣での稽古を体系づけている。

 その上で当庵の手裏剣術の稽古では、最終的には剣術や居合・抜刀術と手裏剣術を併用する刀法併用手裏剣術を、最上位のカリキュラムとして位置づけている。

 それでは、この刀法併用手裏剣術では、どのような手裏剣を用いるべきか?

 もちろん、それは本質的には長剣でも穴あきの重量剣でも、軽量剣でも、伝統的な古流の手裏剣でも、なんでもよい。しかしながら、曲がりなりにも手裏剣術を表看板とする当庵としては、ここで刀法併用専用として、独自の剣を採用したいと常々思っていた。

 それでは刀法併用手裏剣術に用いるための手裏剣の要件とはどのようなものであるか。これは私自身のこれまでの経験から、下記のように考えた。

1) 実用間合は3間以下
2) 最大射程は4間程度
3) 狙う場所は相手の顔面または咽喉部のみなので、布を貫く貫通力は不要
4) あくまでも打剣の前後に剣術や体術など、他の武術と併用して相手を制圧することが前提
5) 携帯性も重視。

 以上、5点である。この要件は、ある意味で、これまで私が再三、論考してきた、刀法併用手裏剣術の根本的な戦略・戦術理論に基づいたものである。

 それでは、上記5つの要件を満たす剣の具体的な数値はどのようなものとなるか? 私が最初に考えたのは、以下のようなものである。

A)全長200ミリ
B)重さ65~80グラム
C)一辺8~9ミリ
D)形状は四角または多角形
E)剣尾に穴はあけずに、単純の先端を削っただけ

 こうした数値は、単に私個人の経験から導き出したというわけではない。これまで、当庵では、何人かの剣術家、居合・抜刀術家の方に手裏剣術を指導させていただいた経験があるが、そのなかでも多くの人が、「全長200ミリ、重さ55グラム、一辺7ミリ、四角」というサイズの軽量剣について、口をそろえて「遣いやすい!」と証言されてきたという経緯がある。

 この点もかんがみて、まとめた要件と数値が、上記のものだ。


 さて、そこでいつもながらご厚誼をいただいている無冥流の鈴木崩残氏にご協力をいただき、今回、当庵独自の刀法併用手裏剣術専用の剣を、制定することとなった。

 このため、上記のような要件や数値を崩残氏にお知らせし、さらに氏の経験から助言をいただき(「複雑な手之内など考えずに打剣・刺中できる剣であるべき」など)、とりあえず3種の剣をトライアルすることとなった。各剣のスペックは以下のとおりである。

(A)20センチ/68グラム/角型7ミリの剣
(B)20センチ/89グラム/角型8ミリの剣
(C)23.5センチ/86グラム/幅10ミリ・厚さ5ミリの貫級刀型

DSC_3194.jpg
▲上から(A)の剣、(B)の剣、(C)の剣

 この3種の剣について、第1回目のトライアルを行ってみた。


■ファーストインプレッション(各50打前後)

 まず一番最初、刀法併用手裏剣術の型でもっとも多用する、2間距離から、帯刀せずに、普通に逆体で打剣した際の感想。

(A)の剣(滑走打法)
最も素直で打ちやすい。手の内はほとんど考えずに打剣可。威力(貫通力)的にやや弱いか?

(B)の剣(滑走打法)
(A)と同様に、手の内をあまり考えることなく素直に打てる。ただし、(A)にくらべて、私自身がまだこの剣に慣れていないため、やや熟練が必要。威力的にはまったく問題ない。

(C)の剣(側面打法+滑走打法)
とりあえず、縦向き(細い幅の面に指を置く)の手の内で打つも、打剣が安定せず。威力は(A)と同等か。


■セカンドインプレッション(各50打前後)

 次に3間距離から帯刀せずに、逆体で打剣。

(A)の剣(無滑走2点打法&滑走打法)
この剣は同形のものを以前から打ち慣れているため、3間でも安定した打剣となる。威力は、やや弱いか。

(B)の剣(無滑走2点打法&滑走打法)
慣れるにしたがい、刺中が安定。(A)より重いだけに、3間距離ではむしろ(A)よりも打剣が安定。威力的にも問題なし。滑走よりも、無滑走の方が刺中が安定するのは、私の腕前が原因か。

(C)の剣(無滑走2点打&滑走打法)
縦向きの手の内では、打剣が安定せず。横向き(広い幅の面に指を置く)では比較的安定。打剣の際に力が乗ると十分な刺さり具合になるが、力が乗り切らないと、威力的に不足するか。


■サードインプレッション

 4間距離での打剣。

(A)の剣(無滑走2点打法)
軽いため打剣安定せず。威力も不安定。

(B)の剣(無滑走2点打法)
安定した打剣。威力も安定。

(C)の剣(無滑走2点打法)
横向きの手の内で、かなり安定した打剣となる! これはちょっと意外であった。威力的にはやや弱いか?

※ここまでの段階で、それぞれの剣を各150打ほど打つ。この時点で、もっとも感触がよいと感じたのは(B)の剣、ついで(A)であった。(C)については、この手の短刀型を私が打ちなれないこともあり、正直今ひとつかなと感じた。


■刀法を併用して。順体、逆体、引き足などで打剣。距離1間半~3間

(A)の剣
これは、以前から使い慣れたサイズの剣であり、まったく問題なし。非常に安定している。ただし威力的にやや弱いかとも感じるが、それはスピードで補えるかと。通常、刀法を併用する際、手裏剣は袴の前側に3~6本はさんでおく。この際、重量剣や長剣だと、重さや大きさが気になってしまうが、この剣ではほとんど気にならない。

(B)の剣
(A)と同じ角型のシンプルな剣なので、打剣に慣れるにしたがい、刺中も動きも安定。威力的にも申し分なし! (A)の剣の場合、やや軽いため距離3間になると、私の場合、刺中が安定しなくなることがあるのだがこの剣は重さが適度なので、やや速度は落ちるが、3間でも安定した刺中となった。

(C)の剣
やはり、最も打ちなれていない形状のため、縦向きでも横向きでも、刺中は安定せず。むしろ横向きに手の内を統一したほうが刺中が安定。ただし、これは剣のせいではなく、打ち手(私)に原因がある。当然ながら、慣れるほどに刺中は安定。威力的には、(A)の剣と同等。袴にはさむ際の感覚は、3種の剣の中で一番自然で、携帯性は抜群!


■トライアル初回の総括

 今回のトライアルでは、最も打ちやすかったのは(A)のタイプであった。これは当然の結果で、なにしろ以前から同型同サイズの剣を使っているので、体で打剣を覚えていたからであろう。

 このため(B)の剣も、(A)のスケールアップ版であるから、すぐに慣れた。また威力的に(A)はやや不足かなと思う点を、この(B)の剣は十分に補っているので、打剣の安定度、威力ともに、十分満足できるものであった。

 さて問題は(C)の貫級刀タイプである。これは、まずその形状が、私個人がいままでほとんど打ち慣れていない形状であり、それだけで(A)や(B)に比べると、打剣の安定度が落ちる。これは剣のせいではなく、打ち手である私の側の要因である。このため、今回のトライアルでの評価は低くなったが、今後、この剣での打剣に習熟することで、評価が大きく変わる可能性がある。

 また、この(C)の剣は、横向きの手の内で3~4間で打つ場合、非常に安定した打剣となった。さらに1間半~2間の縦向き手の内でも、テスト終盤、打剣に慣れるにしたがって、刺中が安定し、(A)や(B)の剣と、ほぼ遜色のない的中率となった。

 このように、今回のトライアルでは、私自身の慣れという点+威力という観点から、

1位/(B)の剣
2位/(A)の剣
3位/(C)の剣

 という評価となった。

 ただし繰り返しになるが、とにかく(C)は、その形状が、私が打ち慣れていないものだけに、現時点での評価が低くなっているということである。

 一方で、携帯性、3~4間(横向き)での刺中の安定性、形状の独自性という点で、この(C)タイプは捨てがたいところがある。

 いずれにしても、今回のトライアルはあくまでも初回で、各剣それぞれ200~300打程度しか使っていないので、今回の結果だけで、どの剣を正式採用、ということは断言できない。

 このため最低でも、あと2~3ヶ月、継続してそれぞれの剣を使ってみて、最終的な結論を出せればと思っている。


■補遺

 さて、今回テストした3種の剣は、いずれも無冥流の鈴木崩残氏と翠月庵主・市村が共同で、当庵の刀法併用手裏剣術専用の手裏剣を製作・制定しようという試みの一環として試作・試打を行ったものである。

 このため、上記に公開している剣のスペックは、いずれも当庵オリジナルのものであり、2009年11月29日現在、伝統流派にしても現代流派にしても、上記と同じスペックの手裏剣を正式に採用し、現時点で稽古・教習に使っているという武術・武道の流儀や会派は存在しないはずである。

 この事実は、あえて本論の文末に、明記しておいてよいかと思う。

  平成21年11月29日
      市村翠雨 謹識


(了)

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