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流祖伝来の「術」と「思想」/(柳剛流)

2019年 06月19日 02:58 (水)

 ここしばらく、初学者への柳剛流の指南として、「右剣」をゆっくりと丁寧に指導している。

 たびたび指摘しているように、柳剛流兵法の修行において最初に学ぶ剣術形である「右剣」と「左剣」は、柳剛流における初学の門であり、極意でもある。

 そこには、流祖・岡田惣右衛門が厳しい修行の中で感得した、戦いのエッセンスが凝縮されている。



 元陸上幕僚監部情報幕僚で陸将補であった松村劭氏は、軍事学における「戦いの9原則」として、

・目標の確立
・主導の獲得
・機動の発揮
・戦力の結集
・奇襲
・不断の警戒
・指揮の統一
・簡明な計画
・戦力の節約

 の9つを挙げ、

「名将と凡将の分かれ目は、この戦いの原則を現実の状況にいかに適用するかによっている。ただ、戦史の教訓として確かなことは、この原則のいずれかに反した戦いは『必敗』することである」

 と指摘している。



 『兵法家伝書』や『五輪書』を挙げるまでもなく、大の兵法(軍略)と小の兵法(個人戦闘)に共通の解を見出そうとするのは、古今を問わず兵法者の性(さが)である。

 そういう意味で、この「戦いの9原則」という視点から柳剛流兵法を検証すると、初学の門である剣術の「右剣」の形に、9つすべての原則をみてとることができる。

 「目標の確立」は一身の斬り合いに勝つことであり、「主導の獲得」と「機動の発揮」は仕太刀による跳び斬りにある。「戦力の結集」と「奇襲」はこの形の中心的な勝口となる脚斬りにあり、「不断の警戒」は脚斬りの後の最終的な勝口に示されている。

 また、形の流れにおけるそれぞれの局面において、「指揮の統一」と「簡明な計画」、そして「戦力の節約」という点が重要になっている。



 兵法の形というものが、勝つための彼我の攻防を極限まで記号化した「遺伝子情報」のようなものだとすれば、柳剛流剣術における「右剣」の形には、岡田惣右衛門が感得した戦いに勝つための術技と心法のすべてが、そこに含まれているといえよう。

 ゆえに、柳剛流における「右剣」という形=業は、その後に学ぶ「左剣」はもとより、剣術、居合、そして免許秘伝の長刀(なぎなた)に至るまでの、すべての業=術の雛型となっている※。

 だからこそ、そこに「戦いの9原則」がすべて含まれていても、不思議ではない。

 深夜、ひとしきり柳剛流の稽古を行い、稽古後、つらつらとそんなことに想いを致した次第。



 私の「武」の根幹であり幹となるのは、あくまでも柳剛流兵法である。

 だからこそ、さらに柳剛流の業前を磨き上げ、事績の調査を深くすすめ、流祖伝来の「術」と「思想」を、正しく余すことなく門人たちに伝えていかなければならない。

 それが、私の武術・武道人生における、後半生の大きな使命のひとつなのだと、強く自負している。


※)三和無敵流から取り入れたと思われる「突杖」の形に関して、こうした柳剛流の一貫した術理から外れる技法体系となっていることについては、すでに本ブログでたびたび指摘してきた通りである。


1906_柳剛流_青眼左足頭
▲柳剛流剣術 「青眼左足頭」(仕太刀:吉松章 打太刀:瀬沼健司)


 (了)
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