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柳剛流二代・岡田左馬輔の「氏(本姓)」について/(柳剛流)

2019年 03月07日 10:25 (木)

 ここのところ、日々の稽古では柴真揚流に集中しているのだが、昨晩は思うところあって柳剛流の稽古。

 剣術から居合、突杖、長刀、そして殺のおさらいまでを、ひとしきり行い、

 「ああ、やはり私の武芸の根幹は、柳剛流なのだよなあ・・・」

 と強く実感。

 そんなこんなで稽古後、つらつらと柳剛流の資料を読んでいて、岡田(一條)左馬輔の「氏(本姓)」と「諱(実名)」の組み合わせが気になった。

 私の手元には、左馬輔直筆という5つの伝書の資料があるのだが、そこには、

 「甲斐源信忠」

 「甲源信忠」

 「甲斐信忠」

 と、3パターンの「氏」と「諱」の組み合わせが記されている。

 具体的には、「甲斐源信忠」というのが2つ、「甲源信忠」というのが2つ、そして「甲斐信忠」が1つである。

 また、昭和14(1939)年に記された仙台藩角田伝柳剛流の免許には、左馬輔の「氏」は「甲源」となっていた。

左馬輔直筆伝書_2
▲岡田左馬輔が、嘉永元(1848)年に戸田泰助に出した免許の署名。「氏」は甲源となっている



 「氏」というと源・平・藤・橘が有名であり、たとえば伊豆の田舎の百姓であったうちの実家は、どういうわけか家紋は下がり藤で、本姓は「藤原」。

 ま、実際のところどう考えても、我が一党は藤原氏の血脈ではないだろうよ(苦笑)。

 つうか、うちの祖父は、

 「我が一族は、北条得宗家最後の執権である高時公の遺児である、北条時行の末裔なのであ~る!」

 と、いうのが自慢だったらしい。

 今だったら、

 「おじいちゃん! だったらうちの家紋は三つ鱗で、本姓は平なんじゃねえの?」

 っと、突っ込みを入れるところだ(笑)。

 しかし、何しろ祖父は、もう40年も前に鬼籍に入ってしまったので、しかたがあるまいね・・・。

 話を左馬輔の「氏」」に戻すと、彼はたんなる源氏ではなく、

 「甲斐源氏」

 というところに、強いこだわりがあったであろうことが、伝書に記された「甲斐源」や「甲源」という本姓から強く感じられる。

 ちなみに左馬輔の家系は、実際に甲斐武田家二十四将のひとりである、一條右衛門大夫信達(信龍)にまで、さかのぼるのだという。



 ところで、私が以前から個人的に気になっているのが、左馬輔の名前(仮名:けみょう)の表記である。

 本人の直筆伝書では全てが、

 「左馬輔」

 となっている。

 また左馬輔が建立した、石巻にある流祖・岡田惣右衛門の頌徳碑でも、石巻にある左馬輔本人の墓石の碑文も、いずれの表記も、

 「左馬輔」

 である。

 これに対して、近代の角田伝の伝書やその他の文献や資料には、

 「左馬之輔」

 「左馬助」

 「左馬之介」

 「作馬之助」

 などと書かれているものがあり、表記の混乱が見られる。

 これについて、柳剛流研究の大先達である森田栄先生は、墓碑や伝書の記載を調査した上で、

 「左馬輔で一定したい」

 としている。

 私もこれに同感で、自分で記述をする際には、左馬輔の名前は必ず、

 「左馬輔」

 という表記で統一している次第である。

 同様に左馬輔の「名字」であるが、流祖・岡田惣右衛門から「岡田」の名字を譲られる以前は、「一條」であった。

 この「一條」という名字についても、資料や文献によって「一条」と表記されているものがあったりするが、左馬輔のご子孫が現在、「一條」と名乗られている事からも、私は「一條」で表記を統一するように心がけている。



 「氏」、「姓」、「名字(苗字)」、「諱(実名)」、「仮名」というのは、なかなかにややこしいものだ。

 ちなみに私は、氏は「藤原」、名字が「瀬沼」、諱は「信良」で、仮名が「健司」、そして「姓」はないので、伝書等の署名には、

 「瀬沼健司藤原信良」

 と記すことになる。

 またこれの読み方は、

 「せぬまたけしふじわらののぶよし」

 である。

 「氏」や「姓」、「諱」といったものは、現代社会ではすでにその意味を失っているものだろうが、古流武術の伝承や日本の伝統文化に対する知的好奇心という観点からみると、これらもまた重要で興味深いものであるといるだろう。


 ■参考文献
 『一條家系譜探訪 柳剛流剣術』一條昭雄/私家版 
 『日本剣道史 第十号 柳剛流研究(その1)』森田栄/日本剣道史編纂所
 『増補・改訂 宮城県 角田地方と柳剛流剣術-日本剣道史に残る郷土の足跡-』/
  南部修哉/私家版 

 (了)
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