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袖車、いろいろ/(古流柔術)

2019年 03月01日 02:00 (金)

 柴真揚流の稽古をしつつ、思うところがあって「袖車」について、資料をつらつらとみていて、ちょっと驚いた。

 私は10代の頃、天神真楊流の「袖車」を習ったので、「袖車」あるいは「袖車締め」というのは、相手の側面から左手で相手の左襟をとり、背後に回りつつ右手で相手の左袖の付け根(肩口)辺りをつかんで締め上げる技だと思っていた。

 先日の本部稽古で師より伝授していただいた柴真揚流の「袖車」も、技の作りや掛けは天神真楊流とは異なるものの、極め方の大意は同様である。

 また、手元にある真蔭流柔術の教本を見ると、「後襟締め」という名称で、天神真楊流や柴真揚流の「袖車」と同様の技がある。

1902_真蔭流_後襟締め
▲『実戦古武道 柔術入門』(菅野久著/愛隆堂/1983年)
掲載の、真蔭流の「後襟締め」


 一方で、昭和43(1968)年に発行された『柔道の学び方』(松柴辰治郎著)を見ると「袖車締」として、

「左手は相手の右肩上から右手は相手の左肩上から前へ回し、親指を外側にして、それぞれ右手で左横襟を、左手で右にある襟を握り、一歩退いて相手を後方へ引き倒しながら、左手は引き上げぎみにし、右手も引いて締める」

 と記されている。

 ここでは、天神真楊流や柴真揚流、真蔭流の「袖車」とは異なり、背後から我の左手で相手の右襟をとり、右手で左襟をとるという形に変化している。

 また襟のつかみ方も、「親指を外側に」出すかたちとなり、古流のとり方とは逆になっている。

 このとり方は、先述した3つの古流柔術の「袖車」よりもより強烈に締めが効くと思われるが、一方で技のとり口としては、右手の動き(襟のとり方)が煩雑で、個人的には対人攻防の中では少々使いにくいように思う。

 それでも、この柔道式の「袖車締」は、上記古流の「袖車」の変化ということで理解できる範囲のものといえよう。

1903_袖車締
▲『柔道の学び方』(松柴辰治郎著/金園社/1968年)より


 ところが、どうも最近の柔道やブラジリアン柔術でいうところ「袖車締め」というのは、これら伝統的な「袖車締め」とは全く異なる技のようなのである。

 たとえば、ある柔道の技の解説ページでは、相手の前からとる「袖車締」として、以下のように解説している。


柔道の袖車絞は、自分の袖口を使って相手の喉を絞めます。

一方の手で相手の首を抱え込み、もう一方の手の袖口を握ります。

握られた袖口の手を相手の頸部に押し込み、両手で頸部をはさみ込むように圧迫して絞めます。

 (袖車絞めのやり方とコツ | 柔道の絞め技の上達法)
 http://judopractice.click/solidify/fasten/sleeve-tightening/



 あるいは、相手の背後からとる場合は、次のようになるという。


相手の首に腕を回し、その袖を反対側の手でしっかりとつかみます。相手の首を抱え込むような体勢から、つかんだ袖を離さないようにしっかり持ったまま、相手の首に回している腕を、相手の咽喉元に移動します。このとき、袖口と腕が、相手の首に回っているような格好になります。 相手を絞めるときには、両手首を使い相手の咽喉元を押し、自分の上体は相手から遠のくように後ろに引きます。腕と体の反作用を使うことで、より強く絞めることができます。

(袖車締 | 柔道武道館-柔道辞典)
http://www.judo-ch.jp/dictionary/technique/katame/sime/sodeguruma/



 ウィキペディアに記載されている「袖車締め」も、その他の柔道の技法解説のwebページなどを見ても、いずれも現在の柔道やブラジリアン柔術の「袖車締め」というのは、「自分の袖口を使って相手の喉を絞める」技とされているようだ。

1903_現代柔道の袖車締め
▲現代の柔道などでいうところの「袖車締め」。相手の頭の後ろに片腕を回し
て土台にし、反対側の腕の袖口を掴み、反対側の手は、相手の頭の前で手
刀を作り、相手の喉元に当て、気管を絞める
©807th Medical Command (Deployment Support)


 これはちょっと、個人的には驚きであった。

 私はかれこれ30年以上、「袖車」あるいは「袖車締め」という技は、先に挙げた古流柔術3流派の、あるいはその変形としての『柔道の学び方』にあるようなとり口での締め技だと、認識してきたわけだ。

 このため、現代柔道やブラジリアン柔術における「袖車締め」は、私の感覚では、自分の袖口をとった形での変形の「裸締め」とでもいったほうが、しっくりとくる。

 すると、現代の柔道やブラジリアン柔術をやっている人と私が、たとえば酒場で意気投合し、「袖車締め」について会話を始めた場合、実はお互いが認識している「袖車締め」という技はまったく異なっており、話がまったくかみ合わないことになりかねないだろう。



 以前本ブログで、伝統派空手の「三日月蹴り」とフルコンタクト空手の「三日月蹴り」が、名前は同じでも技としては全く異なるという点についてふれた。

「三日月蹴り、いろいろ/(武術・武道)」
http://saitamagyoda.blog87.fc2.com/blog-entry-572.html



 空手道における、伝統派とフルコンとでの三日月蹴りの違いと同じように、古流柔術と現代柔道やブラジリアン柔術では、同じ「袖車」(袖車締め)でも、両者はまったく異なる技なのだということを、私は今さらながら認識したというわけだ・・・。

  *  *  *  *

 たとえ同じ「言葉」を使っていても、その言葉の定義を明確にして、あらかじめ共有しておかないと、互いに全く異なるものをイメージしながら、トンチンカンな話していることになりかねないというお話である。

 (了)
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