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監獄長光よ/(身辺雑記)

2018年 07月20日 03:52 (金)

 暑い・・・・・・。

 そして、ニュースや新聞を見ても、世の中嫌な事ばかりである。

 賭場を合法化するとか、水道を外資に売り渡すとか、難病患者への社会保障を打ち切るとかいう一方で、立派な大学を出て官僚や政治家になった人々は、忖度をしあるいは私腹を肥やしながら、公の場でも平気で嘘をつく。

 無知な大人たちの無責任な指導で子どもや学生たちは熱中症で倒れ、貧しい高齢者はエアコン代を節約するために熱射病で死ぬ。

 私ごとき、街角の暗がりでひっそりと生きる流れ武芸者が天下国家を憂いてみても、まったく意味がないことは重々承知だが、それにしてもここ数年来のこの国の在り様には、暗澹たる思いしかない。



 とはいえ飯のタネを稼がねば生きていくことはできず、朝9時から深夜0時まで、ひたすら机にかじりついて年商数百億円という大企業の経営者インタビューなんぞの音源起こしをしていると、まったくしみじみと、生きていくのが嫌になるというものだ(苦笑)。

 さりとてすすんで自裁するほどのガッツもないので、今晩もいそいそと稽古着に着がえ、深夜、柳剛流と荒木流の居合を抜く。

 今晩は、精神の滞りを斬り捨てようと、久々に我が愛刀である市原“一龍子”長光を遣った。

1807_長光


 銘「長光」。

 2尺2寸1分、反り4分 元幅1寸5厘、先幅7分7厘、元重2分6厘、先重1分8厘。

 昭和初期の作。陸軍受命刀匠。昭和19年陸軍軍刀技術奨励会入選。平成の兜割試斬成功の剛刀としても知られ、銘は「一龍子長光」「市原長光」などとも切る。

 先の大戦中、当時の岡山刑務所内での授産事業として鍛刀を行ったとされ、「監獄長光」「刑務所長光」などの異名もあるが、近年の研究では、これに対する異論もある。

 身幅は3.2~2.35cmと広く、重ねも元重8.0㎜、先重5.5mmと厚い。

 切先は古風かつ豪壮な猪首風で、刺突に適す。

 刃文はのたれに丁字風乱れを加え、沸え崩れや飛び焼きが独特の景色を見せる。

 拵は現代のもので、鞘は紅色に金散らしである。



 私の好きな時代劇のひとつである市川崑の名作『盤嶽の一生』は、天涯孤独、真面目で馬鹿正直な浪人である阿地川盤嶽が、旅先で毎回様々な人たちに騙され、その結果、剣を振るう物語だ。

 騙されるたびに盤嶽は、こう吼える。

 「世の中、嘘でいっぱいだ!」

 「嘘はいかん!」

 そんな盤嶽の唯一の心の拠り所が、剣術の師から託された名刀・日置光平だ。

 孤独な剣客である彼は、ことあるごとに愛刀に対して「日置光平よ!」と問いかける。

 ひとりぼっちの貧しい素浪人の、哀しい性(さが)である。



 盤嶽を気取るわけではないけれど、私も心が乱れたときには、愛刀・監獄長光を手にとり、居合を遣い心を鎮めることが少なくない。

 身幅広く、重ね厚く、寸の短い、「実戦刀」という言葉がぴったりのこの一口に、心の乱れや緩みを断ち斬ってもらうのだ。

 美術刀剣としては価値の低い一口ながら、(現代ではありえないけれど)一朝有事の際、己の命を託すにはこれほど頼りがいのある刀はないと、私は信じている。

 それにしても、監獄長光よ。

 世の中、嘘でいっぱいだ!

DSC_9285.jpg


 (了)
 
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