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小渕観音院の柳剛流奉納額の願主は、松田源吾ではない/(柳剛流)

2018年 02月08日 19:38 (木)

 ひと様の誤りを、逐一あげつらって訂正するというのは、なにやら底意地が悪いようであまり気が進まない・・・・・・。

 気が進まないのだが、流儀に連なる者として、間違った史実が流布されるのを見過ごすわけにはいかないので、まるで意地悪な小姑みたいでなんだが、こうしてつらつらと、ネット上の柳剛流に関する間違いを指摘するわけだ。

 「かくすれば かくなるものと知りながら やむにやまれぬ 大和魂」

 といった心持ちである。



 さて過日、ツイッターで、moroさんという方が、埼玉県春日部市にある小渕観音院に掲げられている柳剛流の奉納額について、つぶやかれていた。

 https://twitter.com/morokoshoten/status/961256850686541824


 このつぶやきでは、奉納額の願主を松田源吾だと記しておられるのだが、そうではなく、

 奉納の願主は、岡安英斎(禎助)だと考えられる。

 この奉納額については、以前、本ブログにて詳細を紹介しているので、まずはそちらも参照されたい。

 「柳剛流の奉納額(その2)」 2016/03/28(Mon)
 http://saitamagyoda.blog87.fc2.com/blog-entry-895.html

1603_小渕観音奉納額2
▲小渕観音院に掲げられている柳剛流の奉納額


 さて、この小渕観音院の柳剛流奉納額は、現在、長年の風雨の影響で額文はまったく判別できなくなっている。

 しかし幸いなことに、大正7(1918)年に刊行された『吉田村誌』に、この額文の翻刻が記されている。

 さらにその翻刻も含めた『吉田村誌』の全文が、平成13(2001)年に発行された『幸手市史調査報告書 第十集 村と町・往時の幸手』(幸手市教育委員会編)に掲載されている。

 また、これらを元にした額文の翻刻は、平成20(2008)年に刊行された辻淳先生の『幸手剣術古武道史』にも掲載されている。

 これら史料の記述によれば、この奉納額が献納されたのは慶應2(1866)年であるが、松田源吾はその14年前である嘉永5(1852)年に、すでに亡くなっている。

 また、額文の翻刻には願主の氏名に関する記載はないものの、柳剛流が流祖・岡田惣右衛門から松田源吾、そして岡安英斎と受け継がれ、英斎の門下は数百数千に及ぶ興隆ぶりであり、神と師の恩に報いるために、この額と2口の剣を奉納する旨が記されている。

 さらに額文には記されていないが、この奉納額が献納された慶應2年は、岡安英斎の嫡子である禎三郎が、父より柳剛流の免許を允許された年でもある。

 このように、

1)松田源吾はこの額が奉納される14年前に死去している。
2)額文では流祖~松田源吾~岡安英斎という、3名の道統と来歴が記されている。
3)額文では岡安英斎一門の興隆が、具体的に記されている。
4)額が奉納された慶應2年は、岡安英斎の嫡子・禎三郎が柳剛流の免許皆伝となった記念すべき年である。



 以上の点から、本奉納額の願主は松田源吾ではなく、岡安英斎であるとするのが最も自然であろう。

1603_小渕観音奉納額4
▲辻淳先生の『幸手剣術古武道史』に掲載されている、額文の翻刻


 本来は私が直接、moroさんに、こうした内容をツイッターでお伝えするべきなのであるが、私はツイッターは閲覧専門で書き込みなどはしていないので、本ブログにこのように書いた。

 縁があれば、ネット上を巡り巡って、先様に正しい情報が伝わるであろうし、できればそれを願っている次第である。



 それにしても、柳剛流に関する正しい情報の発信や、通説の誤りの訂正などについて、どうすればより良いのかを考える今日この頃である。

 とはいえ、あくまでも私の本義は、柳剛流の実技の研鑽と伝承であり、史実の調査研究や啓発活動はあくまでも二義的なものだ。

 大切な事は、師より受け継いだ仙台藩角田伝 柳剛流の「業」と「術」を、見事なものに磨き上げ、その実技をひとりでも多くの門人に伝えていくことである。

 こうした実伝を通じて、流儀の正しい伝承や史実も、門人たちに併せてしっかりと伝えていくことが、結局は最善の方法なのであろう。

 流祖・岡田惣右衛門が編み出した柳剛流の「断脚之太刀」を学びたいという志のある人には、私たち武術伝習所 翠月庵/国際水月塾武術協会埼玉支部の門は、いつでも広く開かれている。


 ■参考文献
 『幸手市史調査報告書 第十集 村と町・往時の幸手』(幸手市教育委員会編)
 『幸手剣術古武道史』(辻淳著)

 (了)
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