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”翠月庵の”刀法併用手裏剣術~その7 まとめ/(手裏剣術)

2009年 07月24日 01:24 (金)

 これまで6回にわたり、翠月庵の刀法併用手裏剣術について、基本型五本の解説をしてきたので、本稿はそのまとめとする。

■刀法併用手裏剣術の目的

 手裏剣術が表芸で剣術・居合が裏芸の者、あるいは剣術・居合が表芸で手裏剣術を裏芸とする者、いずれの場合も、手裏剣の投擲と打刀の抜刀・運剣の動きを連続して行うには、それ相応の修練が必要になる。刀法併用手裏剣術の型は、こうした手裏剣の打剣と打刀の運剣を連結させて、スムーズに行うための鍛錬である。

 さらに、武技としての手裏剣術の現実的最大間合が三~四間、剣術・居合の間合が一間、この四間~一間の間を埋めるのが、刀法併用手裏剣術である。形而上・下で三次元的に(拍子を時と考えれば、四次元的とも言えるか・・・)変化する「武術的間合」というものを学ぶ上で、刀法併用手裏剣術は大きな意義がある。


■刀法併用手裏剣術を学ぶ際の留意点

 刀法併用手裏剣術を学ぶ際に、まず留意しなければならないのは、手裏剣の投擲(以下、打剣)と打刀の操作(以下、運剣)を、いかにスムーズによどみなく連結させるか? ということにある。このため、特に初学の段階では的中の精度については、それほど気にすることはない。

 次に留意すべきは、運足=間合である。打ってから斬るにせよ、斬ってから打つにせよ、刀法併用手裏剣術では、打剣の間合と運剣の間合がそれぞれ存在し、それらが混在する。

 例えば、1本目の型「抜付」では、起点の間合は相手まで一間半。ここで抜刀し、相手を留める。次いで後退し、二間から打剣。ここから三歩踏み込んで、一間以内で正面斬りとなる。

 このように、1つの型で、3種の間合が混在し、それらが断絶することなく、連続運動として続くのである。こうした間合の変化、それにともなう拍子を学ぶには、手裏剣術だけではなかなかに難しい。そういう意味で、武術的な手裏剣術を志すのであれば、刀法併用手裏剣術は欠かすこと出来ない稽古であるといえよう。


■刀法併用手裏剣術で分かること

 刀法併用手裏剣術を稽古していて、しみじみ感じるのは、「手裏剣術の手の内と腕の操作と、剣術・居合の手の内と腕の操作は、根本的には異なる」という事実である。

 手裏剣術と剣術を併習している者の間でよく指摘される意見に、「居合(剣術)の稽古をすると、手裏剣術が下手になる」という点がある。

 これはやはり、根本的なところで打剣と運剣の操作が異なる点が原因である、と断言して良いのではないか。

 具体的には、

 1.打剣の際の手離れの位置と、運剣の際の最大力点が異なる
 2.打剣と運剣では、肘と手首の角度・開き具合・締め具合が異なる
 3.打剣と運剣では、同じ正中線上の斬り下ろしでも、振り下ろした際の腕の動きが異なる

 以上の3点が、打剣と運剣では決定的に異なることが、刀法併用手裏剣術の型を稽古していると、非常に明確に感じられる(※1)。

 ただし、これらの差異は、三間以内という実際の運用距離においては、打剣と運剣の修練を個別に十分積んでいる者であれば、それほど困るものではない。しかし、打剣だけあるいは運剣だけの修練しかしていない者が、打剣と運剣を連続して行う、つまり刀法併用手裏剣術を行うと、打剣か運剣のいずれかにある種の”ひずみ”が出ることになる。

 これを中和させるためにも、武術的な手裏剣術を志す者は、普段から刀法併用手裏剣術を十分に稽古しておく必要があろう。


■おわりに
  
 誤解を恐れずに言うならば、武術としての手裏剣術は原則的に併習武術である以上、剣術、居合・抜刀術、体術、槍術、長刀術など、なんらかの武技と合わせて用いる必要がある(※2)。そのための最も平易かつ取り組みやすい形態のひとつが、刀法併用手裏剣術であるといえよう。

 刀法併用手裏剣術に熟練することで、各人の武術的手裏剣術は、より深みを増すであろうし、そこから”体術併用手裏剣術”や”杖術併用手裏剣術”、”弓術併用手裏剣術”など、無限の展開が開けていくだろう。

(了)

※1
 これらの手裏剣術と剣術の根本的な違いについては、無冥流の鈴木崩残氏が、以前から指摘している。

 私は以前、同氏との交流の中で、「1.と3.はたしかに異なるが、2.については剣術の斬り手であれば、一~二間であれば、そのままの手首の角度で打剣が可である」と意見を述べたことがあり、これに基づいて編成したのが、翠月庵の「剣術教習のための手裏剣術~正面斬り」の教習体系である。

 しかし、さらにその後、稽古を通じて厳密に考察してみると、距離が二間以上になる場合、剣術の斬り手のままの手の内では、剣の姿勢に”袈裟”がかかってしまい、剣が右に傾いてしまう傾向にあることが分かった。

 このため手裏剣を上段に構えた場合で、かつ距離が二間以上の場合は、

  1.肘をしぼる
  2.肘を開く
  3.手首の角度を変える

 などの微調整が必要になる。

 つまり、剣術・居合と手裏剣術の手の内と腕の動きは、やはり根本的に違うというのが事実であろう。

※2
 これはあくまでも「武術としての」手裏剣術についてである。

 いわゆる「掌剣術」にしても、柔術や剣術(小太刀・懐剣)の素養がなければ、到底まともな武技にならない。そういう意味で、掌剣術は、体術併用手裏剣術と表現してもよい。一方で、手裏剣の打剣だけで、それが武技として成立するかという点については、私は限りなく難しいのではないかと思っている。

 ゆえに、「武術としての手裏剣術は、他の武術との併習が前提である」という点は、強調しておきたい。

 ただし、レクリエーションやスポーツ、その他の行為・目的のための手裏剣術においては、こうした原則は適用されないし、する必要もないことは言うまでもない。

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