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柳剛流の特徴~山本邦夫教授の論考から(その3)/(柳剛流)

2017年 11月10日 11:09 (金)

 山本論文では、「柳剛流の特徴」の2つ目として「総合武術」という点を挙げている。

 柳剛流は仙台藩角田伝、武州系の各派、紀州藩田丸伝のいずれにおいても、剣術、居合、突杖(杖術)、長刀(なぎなた)、体術(柔・殺活)で構成される総合武術であり、この点について山本論文の指摘は間違っていない。

 ただし山本論文では、上記に加えて「鎗」が含まれているとしている。

 剣術をはじめとして居合、突杖、薙刀、鎗、体術(死活之巻)などを合わせ稽古鍛錬するもので、総合的な武術といえる。



 この「鎗」についての記述は、柳剛流諸派で目録において伝授される「鎗 長刀 入伝」を元にしたと思われるが、柳剛流では鎗術そのものを稽古するということはない。

 この点で山本論文の記述は、「柳剛流では槍術の稽古体系や技もある」という誤解をされかねない表現となっており注意が必要だ。



 さらに山本論文では、柳剛流が総合武術であることの根拠として、岡安貞助が関根丈吉に授与した切紙と目録、岡田十内が飯箸鷹之輔に伝授した免許を翻刻して論文中に記載している。

 ところがこの翻刻の中でも、切紙の部分は誤りが多く、読む者の誤解を招く記述になっているのは非常に残念だ。

 山本論文に記された切紙の翻刻は、次のように掲載されている。

 切紙
 〇備之伝
  ・上段 ・中段 ・下段 ・向青眼
  ・平青眼 ・斜青眼 ・中道 ・右陰
  ・左陰 ・下陰 ・丸橋 ・右車
  ・左車 ・八艸 ・頓保
 〇右剣
 〇左剣
  ・ハジキ ・ハズシ ・右留
 〇風心刀
  ・居合 ・向一文字 ・右行 ・左行
  ・後詰 ・切上
 〇突杖
  ・左留 ・抜留




 この山本論文の翻刻では、本来3本で一連となっているべき剣術形(右剣、左剣、風心刀)から「風心刀」のみが分離され、しかも居合の総称が「風心刀」であるかのような記載となっている。

 そしてなにより、突杖については完全に分断された形で記載されており、まるで突杖の形が左留と抜留の2本しかなく、ハジキ・ハズシ・右留の3本は、あたかも「左剣」に含まれる形のような記載となっている。

 柳剛流の切紙で伝授される基本的な技法体系は、正しくは以下の通りだ(※)。

 切紙
 〇備之伝
  ・上段 ・中段 ・下段 ・向青眼
  ・平青眼 ・斜青眼 ・中道 ・右陰
  ・左陰 ・下陰 ・丸橋 ・右車
  ・左車 ・八艸 ・頓保
 〇右剣
 〇左剣
 〇風心刀
 〇居合
  ・向一文字 ・右行 ・左行
  ・後詰 ・切上
 〇突杖
  ・ハジキ ・ハズシ ・右留
  ・左留 ・抜留




 山本論文ではなぜ、このように読む人が内容を完全に誤解するような翻刻を掲載しているのか?

 単なる編集ミスというにはあまりにも大きな誤りであり、謎は深まるばかりである・・・・・・。

 ここでひとつ言える事は、柳剛流の実技を知っている者、稽古を実際にしている者であれば、このような意味不明な並びの翻刻は絶対にするわけがないということだ。

 この点からも山本教授が、伝書や口承、史料のみを参照し、柳剛流の実技を知らずに本論文を執筆したことが、強く推察できるのである。


※)武州系の一部、仙台藩角田伝、紀州藩田丸伝では、切紙で伝授される剣術に「風心刀」は含まれない。田丸伝では「右剣」「左剣」に加えてさらに6本の形が、切紙の段階で伝授される。また田丸伝では、突杖は切紙ではなく目録段階で伝授される。

 (つづく)
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