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柳剛流の特徴~山本邦夫教授の論考から(その2)/(柳剛流)

2017年 11月08日 14:29 (水)

 山本邦夫教授は、『浦和市史研究 第2号』(浦和市総務部市史編さん室)掲載の「浦和における柳剛流剣術」(以下、山本論文)において、柳剛流の特徴を以下のようにまとめている。

1.斬足の法
2.総合武術
3.かわった用具
4.資格取得の簡略化
5.師家の無制約



 まず、1.の「斬足の法」についてから論考を始めよう。

 山本論文ではこの一節の最初に、

 斬足の法という奇抜な刀法が最大の特徴といえる。



 と記している。

 これについては私も異論はなく、そもそも柳剛流祖・岡田惣右衛門自身、斬足の法こそが当流の真面目であるとしている。

 ただ、ここで注意が必要なのは、これも本ブログではたびたび指摘してきたことではあるが、古流剣術において相手の脚を斬る技はけして特殊な、あるいは珍しいものではなく、諸流の形にも散見されるものだということだ。

 私が知っている限りでも、駒川改心流、力信流、柳生心眼流、天然理心流、直心影流(薙刀)などの形に、刀で相手の脚を斬る技を見ることができる。また、いわゆる「棒の手」といわれるものでも、相手の脚を斬る動きというものはよく見られるものだ。

 こうした点から「斬足の法」は、必ずしも柳剛流だけの完全無欠なオリジナル技法というわけではないという点は、修行者はしっかりと念頭に置いておくべきであろう。

 己が使う業は、相手も使う蓋然性があることを忘れてはならない。

1705_松代演武_柳剛流左剣
▲相手の脚を斬る「斬足の法」は、柳剛流最大の特徴



 続けて山本論文では、「斬足の法」についての解説の中で以下のような論考を記している。

 次の特徴は、頭や胴体、手足のどことも決めず、斬るのではなく突いて突いて突きまくるという点にあった。



 これは、山本論文の中でも最大の誤りであり、まったくの事実誤認であることを、ここで明確に指摘しておきたい。

 山本教授のこの記述は、三重県のM氏所蔵と言われる『奉献御寶前』という奉納額の写しの一文である、

 知身体四肢無一所不斬突也



 という部分の誤読であろう。

 柳剛流が江戸時代後期の他流試合などにおいて、小手や面に限らず、胴そして脚など、全身を広く打突部位としたというのは、当時の神道無念流の剣客の覚書にも記されており、「身体四肢について、斬ったり突いたりしないという場所はない」というこの一文を裏書きしている。

 しかし、どういうわけか山本論文では、これが「斬らずに、突いて突いて突きまくる」と、誤読されてしまっているのだ。

 実技から検討しても、少なくとも仙台藩角田伝 柳剛流剣術の実技・実伝においては、「斬らずに、突きまくる」、といったことはまったくない。

 むしろ剣技としての突きは、柳剛流では特段重視されていないことを、明言しておく次第である。



 そして山本論文では、「斬足の法」の一節を、以下のようにまとめている。

 太刀での優劣が終りまでつかないときは、剣を棄てて当身をくらわせ勝負を決めるというもので、極めて実戦的なものであった。



 この記述については、やはり先に挙げた『奉献御寶前』の一節に、

 闘数合而不見優劣則棄剣手捉以決勝敗



 とある。

 また実技・実伝からみても、

・かつての柳剛流諸派には、柔術技法や殺活術が伝えられていたこと

・仙台藩角田伝の柳剛流においては、現在、柔術技法や殺法は失伝しているが、免許で伝授される「組打」や「法活」(活法)は、実技が伝えられていること

 以上の点から、この部分の記述については、山本論文の指摘する通りだといえるだろう。

 (つづく)
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