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他人を攻撃せずにはいられない人/(身辺雑記)

2017年 10月29日 16:54 (日)

 心療内科関連の取材のため、下調べの一環として「事前に読んどいてください」といわれたのが、片田珠美著『他人を攻撃せずにはいられない人』。

1710_他人を攻撃せずにはいられない人


 これ、25万部も売れているそうな。

 内容的には一般向けのサラッとした読みものなので、学術的な深みとか、実際にそういう人に被害にあっている人への具体的なノウハウには乏しいけれど、最近少なくない「他人に攻撃的な人」とは、こういうものなのかを知るための手がかりや、理解への入り口としては良いのではないかと思う。

 現在、私の直接的な知り合いだとか、仕事関係の知人や関係先、あるいは近しい武術関係の人々などには、こうした「他人を攻撃せずにはいられない人」というのはいない。

 なにしろ自由業なので、おかしな人や変な仕事の依頼は断ればよいし、武術・武道の世界についても、こういったパーソナリティ障害系の人とは、なるたけお近づきにならないように平素から心がけて距離を置いているからだ。

 一方で浮世に目を向けると、確かに最近、こうした「他人を攻撃せずにはいられない人」たちというのが少なくない気がする。



 過日、親しい人と一緒にとある劇場で、古典芸能を鑑賞していたときのこと。

 公演中、隣の席に座った40~50代くらいの女性の肘が、私の肘にぶつかった。

 おやっと思ってそちらを向くと、鬼の形相で私をにらみつけて、「いいかげんにしてよ! 何度も肘がぶつかる!!」と声を荒らげる。

 いやいや、肘をぶつけてきたのはそちらの方だし、しかも今この1回だけじゃん・・・・・?

 ちょっと神経過敏で被害妄想ぎみな人なのだろうと思い、関わり合いになりたくないが、さりとて舞台の公演中で席を変わるわけにもいかず。

 異変を察した親しい人が、「どうしたの?」と私の耳元で小声で聞いてくるので、思わず苦笑しながら私は肩をすくめるジェスチャーで答えた。

 すると、その様子を見てさらに激高したのであろうか? 文句をつけてきたその女性は何と私に向かって、こうのたまったのである。

 「この、デブ!!」

 ・・・・・・。

 私はこれまで、パッポンストリートでニセ警官に手錠をかけられたり、アンカレッジの安宿でゲイのおじさんに交際を迫られたり、パタヤのディスコのトイレでヤク中のオカマに襲いかかられたり、タシュクルガンで高山病で死にかけたり、ディヤルバクルで治安軍の装甲車にひかれそうになったり、クチンのジャングルで州軍に監禁されつつ尋問を受けたり、ダマスカスで秘密警察に尾行されたりと、日本で生まれ育ったアラフィフのオジサンとしては、それなりにけったいな人生経験を積んできたつもりである。

 それにしても、まったく見ず知らずのわけのわかんないオバサンから理不尽にも、「この、デブ!」呼ばわりされたのは、もちろん生まれて初めてだ。

 ま、自分がいささかメタボぎみであるのは否定しないけれども・・・・・・、「この、ハゲー!!!」発言で有名な豊田真由子元議員じゃあるまいし、まことにもって失礼千万である。

 とはいえ、なにしろ今この瞬間は、目の前で片岡仁左衛門演じる藤田水右衛門が、いままさに棺桶の中から飛びだそうかという、『通し狂言 霊験亀山鉾』有数の見せ場のひとつ。

 そんな時に、ちょっとアタマのおかしい人の暴言にこちらも激高して声を荒らげるのはみっともないし、なにしろ自ら肘をぶつけてきて因縁をつけて来るような相手なので、何をしでかすか分からない。

 そこで、いつでも不測の事態に対応できるよう心に留めつつ、しかし相変わらずこちらをにらみつけるオバサンを無視して、私たちは芝居の鑑賞を続けた。

 その後もオバサンは、こちらを何度もにらみつけたり、これみよがしに自分の肘をさするようなしぐさを繰り返していたのだが、それ以上のことは特に起こらなかった。

 終幕の口上の後、幕が引かれ会場が明るくなり、親しい人と、「いや~、やっぱ仁左衛門は色悪だよねえ」などと二言三言話していると、となりのオバサンは周囲の人を押しのけるようにしながら、ひとりで足早に会場から出ていった。

 それを見て親しい人が、「ところで、隣の人と何かあったの?」と聞くのでコトの顛末を話すと、

 「ええっ! そんなこと言われたの!? それにしても・・・・・デブって・・・・・ヒドイ・・・、でもごめん・・・、あはははははは」

 と大爆笑である。

 親しい人によれば、女性というのはえてして、どうにも言い返しようがない相手に、それでも何か悪口を言おうと思うと、大概が相手の身体的なことを言うものなのだという。

 「それにしても、デブってねえ・・・はははは、ごめんごめん」

 私としては、頭のイカレタ被害妄想気味のオバサンに対して沈着冷静に対応しつつ、あまつさえ万が一そのオバサンが刃物でも取り出して暴れるようなら、親しい人を含めて周囲の人々の安全を確保しつつ即時制圧できるように不断の警戒をしながら、なおかつ仁左衛門や又五郎さんたちの見ごたえのある芝居を楽しむという、なかなか普通の人ではできないであろう的確かつ洗練された対応をしていたのである。

 それをだね、なにもそんなに爆笑することはないんじゃない。いやホント、お願いしますよ・・・(笑)。


1710_写真
▲デブで、ど~もさーせん!



 後日、ネットで調べてみると、読売新聞の掲示板に、今回のように公共の場で自ら他者にぶつかるなどして因縁をつける、あるいは電車内で体が触れてもいないのに周囲の人を威嚇するというような女性がいて迷惑をしている、というようなスレッドがあった。

 いずれの場合もシチュエーションこそ違え、私が巻き込まれたような形で当り屋のようにして因縁をつけ、周囲の人をだれかれ構わず攻撃するのだという。

 ま、暴言ぐらいであれば、人語を解するボウフラやゴクゾウムシが意味不明なことを喋っているのだと思い、聞き流せば良いだけなのだが、実際に暴れだしたり、あるいは痴漢の誤認逮捕のようなことになったり、最悪、凶器などを振り回して周囲の人に危害を加えるようなことになると、ちょっと話はシビアだなあと思う。

 思うにこうした、「他人を攻撃せずにはいられない人」による他者への理不尽な攻撃というのは、実は本人の不安やルサンチマン、弱さや心細さ、満たされない自分の生活や人生への怒りの現れなのだろう。

 「なぜそんなに、口汚く他人を罵るのか?」

 「なんでそれほどまでに、他者を攻撃するのだろうか?」

 と思うような人が、実生活にしても、あるいはネット上でも、最近はけして少なくないように感じられる。

 こうした人たちの心には、満たされない己への自己憐憫や、ドロドロとしたルサンチマンが果て無く渦巻いているのだろう。

 以前私も、このような「他人を攻撃せずにはいられない人」からネットで誹謗中傷されたことがあるのだけれど、その際に尊敬する中国武術家の方から、

 「そういう攻撃をしてくる人への最良の対応は、自分が好きなことに打ち込んで、充実した日々を送ることではないでしょうか」

 という言葉をいただき、心励まされたものだ。

 そもそも、攻撃的な行為や罵詈雑言、当てこすりや嫌みでは、人の心は動かせない。

 それどころか他者を攻撃することで、己の品性の醜さを、周囲にさらけ出しているということが分からないのだろうか?

 少なくとも私は、そんな人間にはなりたくないと、しみじみ思う。

 そしてなにより、誰もが小学校で習ったと思うけれど、デブとかハゲとかチビとかブスとか、他人様の体や見た目のことを悪しざまに言葉にしてはならないのは、言うまでもありません。


 「あなたは、誰かの怒声や罵倒やけんか腰の態度に、『ああ、そうだな、この人の言う通りだ』と納得したことがありますか? 僕は一度もない。人の心を動かそうとするためには、自ずと言葉や態度は、丁寧で、誠実になるはずなのだ。だから、攻撃的な態度で臨んでくる人に自分が対応する必要はない」(小池一夫)



 (了)
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