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歌舞伎は国立劇場で/(身辺雑記)

2017年 07月20日 10:32 (木)

 歌舞伎を観るのは、もっぱら国立劇場だ。

 歌舞伎座も改築する前は何度かいったが、どうもあの豪華着物オバサン軍団に象徴されるスノッブさが、われわれ底辺に生きるプロレタリアートには、設楽原の馬柵もかくやと思わせるほどの敷居の高さを感じさせて、お尻がムズムズするのである。

 その点、国立劇場は、どちらかというと地方からのお上りさん中心といった風な(失礼)牧歌的な雰囲気があり、あまり敷居の高さを感じさせない。

 「大向こう」ひとつとっても、国立劇場のそれは、歌舞伎座のものと比べると、いささかほのぼのしたものが多く、「これならオレも、『播磨屋!』とか言えちゃえそうかも・・・!?」などと思ってしまうほどの、のんびりとした雰囲気が好ましい。


 そんなこんなで、先月は錦之助の『毛抜』、今月は菊之助の『一條大蔵譚』を鑑賞した。

 去年の11月に『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』、今年3月には『通し狂言 伊賀越道中双六』と、いずれも大御所・吉右衛門の名演を、同じくここ国立劇場で堪能させてもらったのだが、錦之助や菊之助など、これからの歌舞伎を背負っていく中堅どころの勢いのある芝居は、また違った意味で見ごたえがあった。

 ことに菊之助は、思っていた以上に良い役者っぷりであり、いままで「ま、菊五郎の息子でしょ」と、いささか軽く見ていた自分の不明を深く反省した次第。

 『一條大蔵譚』では、岳父・吉右衛門の監修もあってか、その「うつけ」ぶりと、クライマックスでの見事な長刀捌きの対比が、まことに印象的であった。

 役者として華があり、凛とした雰囲気もただよわせ、うつけから大丈夫までの演じ分けも見事。

 いいねえ、5代目!

 あるいは『毛抜』では、物語のキーとなる小道具のひとつに小柄小刀があり、これを錦之助演じる粂寺弾正が、見事に手裏剣に打って相手を仕留める描写は、手裏剣術者としてたいへん痛快であった。


 歌舞伎座に比べると敷居が高くないのが魅力の国立劇場での歌舞伎鑑賞であるが、もうひとつの、いや最大の魅力(?)かもしれないのが、その料金のお手ごろさである。

 たとえは、上記の『毛抜』や『一條大蔵譚』は、3階席で観ておひとり様1,500円!

 あるいは『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』や、『通し狂言 伊賀越道中双六』は、お昼から夕方までたっぷり4時間以上も芝居を楽しんで、お代はなんと3階席でおひとり様1,800円である!!

 映画館で観る映画と同じかそれよりも安い値段で、名優たちの演技、ヴィヴィットな衣装や舞台、生の伝統音楽などを堪能できるのだから、こんなにうれしいことはない。

 これが歌舞伎座だと、3階席でも4,000円とか6,000円とかするわけで、一幕見でも高いと2,000円もするなど、やっぱり貧乏足軽や雑兵は馬柵の前で種子島で撃たれて討ち取られちゃうんだぞという程度には敷居が高いんだよ、歌舞伎座。

 なお3階席というと、「どうせ舞台から遠くて、たいして見えないんでしょう?」と思われるかもしれないが、さにあらず。少なくとも国立劇場は、思った以上に、3階席から舞台までが近い。

 それどころかむしろ、1階席や2階席に比べると、花道も含めた舞台全体を俯瞰することができ、非常に見やすいのである。さすがに役者の細かな表情までを見て取ることはできないが、そこはそれ、オペラグラスがあるじゃないか。

 歌舞伎鑑賞における通人である「大向こうさん」が、1階や2階の席ではなく、あえて3階席の最奥に座るというのも、なるほどと思う。

 敷居が低く、料金も手ごろで、だれでも気軽に楽しめる国立劇場での歌舞伎公演。

 ぜひ一度、ご鑑賞あれ。


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▲長刀で打ち取った悪者の生首を毬の代わりにして、大喜びで遊びほうけるという、超絶うつけぶりが光る一條大蔵卿・・・

 (おしまい)
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